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「キセル以外持ったことのない手や!」~大和路の美しさ~

菅沼先生の美しくも、真理をついた台詞の数々が
名作といわれる所以なんでしょうね。

以下、ウロ覚えですがあげてみます。

かもん太夫が与平からお金を受け取って。

「生まれてはじめてまことのこもったお金をいただきました」

遊女のサダメとはいえ、彼女らに払われるお金は下心ありきのもの。
邪心のない与平の心のこもったお金への気持ちが伝わります。

妙閑(忠さんの義母)さんの

「チリ紙は一枚で鼻をかむもん。
でもだんなさんはたばねて鼻をかんでるようです」

上手いわ。チリというコトバ一つで
お金をチリのように扱うなと、ネタをひっぱる台詞使い。
そこに、この妙閑さんがどんな人間かすぐわかるようになってます。
(ちなみに、前回雪組のみさのえ~るの言い回しは上手かった!)

そして。

今回1番自分の泣き所にきた名演技が

ナトリさんでした!!!

第2幕。

逃げる2人。
忠兵衛の故郷新口村まできます。

幼馴染の家にたどりつき、行く先がみえない2人の前に老人が現れます。

忠兵衛のお父さん。

こける老人。

梅川がかけよります。このひとが誰かをわかっています。
下駄の鼻緒をすげる梅川。
その手をみるお父さん。

「糸のように細い手。
キセルより重いものをもったことのない手。
男をまどわす憎い手や!」


ワタクシ、結構他人様の手をみて、
アレコレ想像する人間なんで、

すっごくわかります!!

お父さんは決して「糸のように美しい手」とは言いません。
ひたすら「憎い」のです。

遊女の手。

水仕事なぞしたことのない女の手ではないか。

それを影で隠れて見てる忠兵衛の、
なんと情けのない哀しい顔。

そしてお父さんは、

「生きてくれ」と言い残し、去っていきます。

この老父には、この先に幸福などこないことは
観てるものに痛いほど伝わる。

親が思う子への心。

後悔してもしきれない、「若さゆえの過ち」ですまされない、
罪を犯したコトの重さを、このシーンで思い知ります。

年老いた父を見送るしかできない忠兵衛の
業の深さと、寂しく去る、ナトリ・お父さんの姿。

このたった5分あるかないかのシーンが、
ものすごく心を打つのでした。

このシーンができる人は、
心から「人を思える」芝居ができる人でないといけません。

歴代のお父さん役をすべてみたわけではありませんが、
ワタシには、ナトリ・お父さんが最高でした。

このシーンを観るだけでも、お金を出す価値はあると思います。

最後に。

前後しますが、梅川の「京都にいるお母さんに一目逢いたい」
この一言だけが、梅川の役についての、唯一の手がかりです。
それまでは、忠兵衛への無邪気なまでの純粋さしか、
あゆっち梅川からは、感じませんでしたが、
この役をやるにあたり、
この子が遊郭にきた経緯をしる唯一の情報が、
「京都」に母が1人で住んでいる、ということ。

それだけで「ああ、お梅ちゃんはお父さんがいなくて、
食べていけなくて売られてきたんやな」と彼女の
バックボーンを知るわけです。

忠兵衛が何故に彼女にひかれたんだろうと、
考えたとき、お父さんが1人ででてきた時に、
もう母親はいないな、と思い、
梅川も父親がいない、と思えば、
お互い、片親同士の「寂しさ」がひかれた原因の1つになったんじゃ
なかろうか、と。
作り手になって、改めて台詞を聞いたとき、

非常に細かく、丁寧に書かれた台本であることに
気づいたのです。


なれば。

あとは雪に埋もれて死んでゆく2人を、
見送る役目は、やはりこの孤独な男の親友である、
八右衛門しかいないだろう、と思うわけです。

いままで何故、与平が歌うのかは、わかりませんでしたが、
今回、まっつが歌うことで、
この壮バージョンの「恋の大和路」は完璧な作品となりました。

まっつが八右衛門になりきったからこそ、
心からであふれてきたであろう
「この世でただひとつ」の言葉の数々。

特に千秋楽のこの日は、格別でした。

「歩みつづけて 歩みつづけて 歩みつづけて」

2人の命が果てるまで、この絶唱が劇場に響き渡ったあの時間は、
もうこの舞台で「倒れてもいい」とさえ思えるような悲壮な歌声でした。

そして幕。

何度も何度もカーテンコールはありましたが、
今回は何の挨拶もありません。

でも、それでいいと思いました。

素晴らしい舞台に余計な挨拶など必要ないです。

100周年に、これだけのものができる力が
今の雪組にあることが、本当に嬉しかったです。
そして、まっつ。

あの絶唱をワタシは忘れません。
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No title

この本で一番印象に残ったセリフは、私も
「この手」のところです。
初演の時、こよりをつくる手の演技が良かったという評を読んで、子供でしたから、全くピンときませんでした
でも「この手」が「狂わせた」んですから、その演技が大切だったんですよね。
ここは自然に泣けますね

えむさま

コメント、ありがとうございます。

菅沼先生って、こういう「生活感」がでた
生きた人間の言うような「台詞」がうまいなあと
思った次第です。
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ナムタン

Author:ナムタン
宝塚歌劇の批評、芝居のお話などを書いてます。
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